"マイベスト宮部作品"でもある『模倣犯』からのスピンオフ。同作から9年後の物語ですが、事件の後日譚ではなく、今なお当時の記憶から逃れられないフリーライター・前畑滋子の後日譚になります。
いつものように簡単に読後感だけ記すつもりだったんだけど、どうしても一点、納得のいかないところがあるので、今回はそこに特化したレビューになります。
ネタバレするので、該当部分を「追記」にして隠しますが、RSSリーダーや検索だと拾われる可能性があります。ご注意下さい。
今回は「追記」を使うので通常と異なる書式で。データはここに置きます。
読了:07/8/9
採点:☆☆☆☆
参考にさせていただいたブログ:
TB>
Kadock's BlogTB>
つぶつぶダイアリーTB>
読み捨てられてゆく言葉たち実のところ、この部分に触れているレビューも多く、先々はオープンに語られそうな気がするのですが、ネタバレされると確実に読み手の興を殺ぐと現時点のぼくは考えるので、普段はあんまりやらないことですが「追記」に隠したいと思います。
では、
以下この作品に関してネタバレします。
最初に断っておきますが、完結した小説作品としては面白かったです。宮部はやっぱり巧いな、読ませるな、というのが素直な感想。
最近の、あんまり評判のよろしくない数作は読んでないのですが、宮部みゆきの諸作中、平均的なレベルと感じました。というと誤解されそうですが、ぼく的にも平均値の高い作家なので、それなりに高い評価をしているとご了解下さい。
本題です。
ぼくが引っかかっているのは、超能力の扱いでして。読み始めてすぐ、これが気になりました。
最終的に等の能力(サイコメトリー)を超能力とはっきり言い切るのか、なんとなく超能力と仄めかす程度で抑えるのか、どっちとも言い切らず読者の判断に任せるのか、超能力をすっかり否定して理に落とすのか…。
どれでも構わない、しょせんエンターテイメント小説は絵空事なんだから――と言いたいところですが、これが『模倣犯』を踏まえたスピンオフ作品となると、それじゃ済まされないんですね。
「超能力だった可能性は否定しきれないが、確かなことは解らない。別に妥当な説明が付かないわけではないし」といったあたりが、ひとまずぼくの許容範囲です。
宮部の超能力ものは面白い。同感です。また、これが独立した作品なら、超能力どころか幽霊が現れようが宇宙人が来襲しようが一向に構わない。でも、『模倣犯』の続編が超能力ものであるのは問題です。
『模倣犯』で犯人に監禁され、ひどい目に遭わされた女性たちは、おそらくムダと知りつつ神に助けを求めたことでしょう。あるいはサイコキネシスが使えたら、テレポーテーション能力があったらと、自分でさえ信じちゃいない祈りを心に抱いたかもしれない。
でもその祈りは誰にも届かず、持ってもいない能力が発揮されることもなく、彼女たちは無慈悲に殺されていくわけです。
そんな現実の非情さを描いたのが『模倣犯』なわけです。
にも関わらず、そういう作品からのスピンオフ作が、"超能力を持つ人間が存在する"世界観で描かれている。
かくのごとく『模倣犯』の世界観が書き換えられることに、ぼくは抵抗を覚えたということであります。
そんなことが気になるんなら、『模倣犯』のことなんて意識せず、独立した作品と割り切って読んだらどうか。続編と謳ってるわけじゃないし――。そう言われるかもしれません。
確かに読まずともストーリーを把握する上では問題ありません。けど、作品評価に与える影響は、読むと読まないとでは劇的に違う(はず)。前畑滋子の立ち位置を理解するには、『模倣犯』事件を深く知っているに越したことはなく、そういう意味では、これは独立した作品だからと逃げるわけにはいかない。
そもそも、本作のテーマに超能力というモチーフは不可欠なんだろうか……。
そこに思いを馳せるなら、超能力者・等がその能力の故に命を落とした可能性を指摘した部分は、必ずしも彼の力は祝福された能力ではないんだから、といった作者のエクスキューズのようにも感じられ、そこまでするなら別のアングルから物語をつくれば良かったのにと思わざるを得ません。
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小説としての「模倣犯」は完結していますが、関わった人達にとっては、そんな簡単に終わるものであるはずもなく。「楽園」は過去の事件に囚われた前畑滋子の、「模倣犯」との決別の物語なのか。「模倣犯」9年――前畑滋子再び事件の渦中に!自宅の床下で16年間眠り続け..
楽園 下
出版社: 文藝春秋 (2007/08)
ISBN-10: 4163263608
評価:79点
上巻をたっぷり使って、亡くなった少年「等」の超能力を肯定し、下巻からは「娘殺しと死体遺棄15年」事件の謎の解明へと一気に突き進んでいく。
相変わらず語りに過不足がなく、適度に伏線も...
楽園 下
出版社: 文藝春秋 (2007/08)
ISBN-10: 4163263608
評価:79点
上巻をたっぷり使って、亡くなった少年「等」の超能力を肯定し、下巻からは「娘殺しと死体遺棄15年」事件の謎の解明へと一気に突き進んでいく。
相変わらず語りに過不足がなく、適度に伏線も...
[C109] なるほど